曹洞宗僧侶の佐藤俊明さんは父の旧制中学時代の同級生。銀座相馬龍での同級会にもよく出席していた。ある時、時間がなかったのか俊明さんは袈裟のまま同級会にいらしてお酒を飲んでいた。その後酩酊したあるお客さんがトイレから帰ってきて嘆いた。「ああ、俺はもう死ぬのかなぁ~、隣にお迎えのお坊さんが立っていたよ」

 私はうちのお客さんですよ、といって慰めようとしたら俊明さんがトイレから帰ってきた。そのお客さんは私を見て「ほらね、追いかけてきたよ」といって怯えていた。その後父が話して誤解も解けて、お客さん同士和気あいあいと飲んでいた。写真は父の法要同級会に招かれたときのもの。大正5~6年生まれの皆さん。祖父の旧制鶴岡中学の教え子でもあるので、皆さんが祖父の話もしてくれた。

父の本棚にたくさん俊明さんの本があったが、その頃は興味もなく読まなかった。後に読んで我が身の不甲斐なさを痛感した。ああ、もっとお話を聞いておけばよかったのに!と。いつもの事である。